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【空海】土木も天才!土木スーパースター列伝 #01

こんにちは。土木広報センター土木リテラシー促進グループ長の鈴木三馨です。

普段はコンクリートの研究をしているのですが、土木リテラシー促進グループでは土木の世界をもっと広く多くの人に知ってもらおうと『土木偉人かるた』を制作し、その普及活動を行っています。

土木偉人かるた
https://www.jsce.or.jp/publication/detail/detail.asp?id=3045

ここfrom DOBOKUさんにお邪魔して、図々しくもマガジンを作らせて頂くことになりまして、不定期ながら『土木偉人かるた』に登場してくる偉人、『土木偉人かるた第2弾』に登場させたい偉人たちをご紹介していきます。

02_絵札全体

記念すべき第一回目の偉人は『空海』です。約1200年前の平安時代に高野山を開き、真言宗の開祖と言われるお坊さんとして有名ですよね。

また「弘法も筆のあやまり」という有名な言葉があるように書道の達人で、日本三筆の一人でもあります。そして、日本中に伝わる数々の"空海伝説"…

そんな空海は土木の分野でもスーパースターだったのです。なぜお坊さんが土木なのか? そのハンパない活躍ぷりをお届けします。


空海ハンパない伝説①〜水害復旧工事を朝廷から命じられる


香川県には、大小約1万2000箇所のため池があるそうです。その中でも満濃池(まんのういけ)は日本最大の灌漑用ため池です。その満濃池の歴史をさかのぼってみましょう。

■満濃池
住所:香川県仲多度郡まんのう町
日本最大級の灌漑用のため池。2019年に農業灌漑目的のため池としては全国で初めて国の「名勝」に指定されている。
毎年6月15日(空海の誕生日だから?)に讃岐平野の本格的な田植えシーズンの到来を告げる行事「満濃池のゆる抜き」が江戸時代以前から行われている。

100年以上前に作られた農業用ため池「満濃池」が818年大洪水に見舞われ決壊。周辺の田畑に甚大な被害をもたらしました。

ため池とは、土を積み上げて堤防をつくって水をためたもので、稲作文化の発展した古代日本ではため池は重要な施設。雨が少なく大きな川も湖もない讃岐(香川県)にとってため池は欠かせないものでした。

修復を考えた当初、朝廷の命により派遣された役人が修築を試みましたが工事は難航し、着工したものの人手も技術も足りなくて2年たっても(1年説もあり)完成の見通しが立ちません。

そこで白羽の矢が立ったのが地元讃岐出身の空海だったのです。821年のことでした。そして空海はなんと、わずか3ヶ月程度で工事を完成させてしまいます(工期については諸説あります)。

でも、どうして朝廷はお坊さんに現場指揮を任せたのでしょうか? そして、空海はどうやって圧倒的な短納期を実現したのでしょうか?  そのあたりを紐解いていくと、空海のスーパースターたる理由が見えてきます。


空海ハンパない伝説②〜最先端土木技術を要していた


朝廷の命を受けて現地に立った空海は、大きな水圧にも耐えられるよう当時の日本ではみられなかった「アーチ型堤体」を初採用するだけでなく、数々の新技術・新工法を採用していきます。

雨季に水かさが増えて決壊することを防ぐため、余分な水をため池の外に出す余水吐(よすいばき)と呼ばれる調整溝を掘る。
堤体の決壊防止のために築堤時に補強盛土工法を採用。土を薄く盛っては、木の小枝を敷き詰めて足で締め固めることを繰り返す工法で、ジオテキスタイル工法など現在用いられている補強土工法の地産地消版とされる。

ここで大きな疑問が浮かびます。なぜ、お坊さんである空海が土木の、しかも当時の日本にはなかった最先端の土木技術を要していたのでしょうか? 答えは"留学"です。

満濃池復旧工事の15年ほど前の804年。31歳だった空海は遣唐使船に乗り、暴風雨に遭い難破し、34日間の漂流を経ながら、中国の唐へ渡ります。

唐で仏教の「五明の学」を修めただけでなく、当時の最先端テクノロジー「工巧明」にある土木工学にも精通し、わずか2年あまりで帰国。それが、新技術・新工法の開発や、海外土木技術の国内普及に貢献することにつながっていきます。

恐ろしいです。空海!


空海ハンパない伝説③〜エグい集客力


ところが、ハイテクな土木技術を持ち込んだからといって、実現するためには圧倒的なマンパワーが必要になります。では、どうやって工期をわずか3ヶ月あまりで終えてしまうことができたのでしょうか?

嵯峨天皇より高野山を賜り、真言宗をスタートアップしたのは816年とされ、満濃池復旧工事を手がけた821年当時、すでに空海はその名を国内中に轟かせていたスーパースターだったと言います。

彼はきっと、自分の名声と存在価値を理解していたことでしょう。空海を一目でも見たい(拝みたい?)と多くの人が満濃池復旧工事に参加することになりました。

大林組プロジェクトチームの試算によると、満濃池の復旧工事に携わった延べ人数はなんと38万人だとか(ここでは10ヶ月工期で試算)。古代の讃岐の推定人口は20万人程度と考えると、圧倒的なマンパワーを獲得した超巨大プロジェクトだったことが想像できます。

朝廷は、唐から持ち帰ってきた空海の土木知識の高さを知っていたのか、あるいは類まれな人望を計算していたのか、またまた、すがるような気持ちで命を下したのか定かではありませんが

空海は独創的な技術を駆使し、多くの人民と資金を集め、持ちうる力を結集させて讃岐の人たちのピンチを防ぎました。つまり、ヒト・モノ・カネを集められる総合プロデューサーのようであり、本当にスーパースターだったわけです。

だけど、ふと思うのです。どうしてお坊さんが土木技術を習得して実践し、水を豊かにする必要があるのか? その答えが空海の著書『御請来目録(ごしょうらいもくろく)』の言葉から読み取れます。

~釈教(しゃくきょう)は、一言之を蔽えば、唯二利(にり)に在り~
「お釈迦さまの教えはひと言で言えば、私達の命は、自分のため(=自利)だけに使うのではなく、自分以外の人のため(=利他)にも使うことが大切である」

空海はこの利他の考えで土木技術を駆使して実践したのです。彼にとっては土木事業も、宗教や書と同様に利他を実践するツールだったんですね。土木の仕事に誇りが持てます。


最後に、土木リテラシー促進グループからお知らせです!

48名収録している『土木偉人かるた』ですが、48名じゃ足りない!という声を多く頂いておりまして、この度、みんなでつくる『土木偉人かるた』ver2を計画しています。

そこで、多くの方から「私の推し偉人!」を募集しています。

また、「みんなで作る土木偉人かるた 土木偉人イブニングトーク」も月1回程度行います。参加は無料ですので、お時間の調整がつく方がいましたら、ぜひご参加ください!第1回は土木スーパースターの空海の誕生日に行います。

~みんなで作る土木偉人かるた 第1回 土木偉人イブニングトーク~

■日時:2021年6月15日(火) 17:00~17:30ごろ
■場所:オンライン開催 (Zoomウェビナー)
■費用:参加無料
■話題:『土木偉人かるた』に私の土木偉人がいない!
■メインスピーカー:
 田中尚人(熊本大学 准教授)
 松永昭吾(土木偏愛note「from DOBOKU」 編集長)
 鈴木三馨(土木リテラシー促進グループ長)
■司会:寺村淳(第一工科大学 准教授)
■申込み:「本部主催行事の参加申込」よりお申込みください。


文責:鈴木三馨(土木リテラシー促進グループ長)
プロフィール
絵本作家かこさとしさんの『土木の絵本』をきっかけに、共著者の緒方英樹さんに出会い、土木偉人の沼にハマる。土木偉人愛好家たちと推し偉人について語り合うことを夢見ている。家族旅行で土木遺産・施設に行きがち。特技はコンクリートにあるひび割れのひび割れ幅を当てること。
スキありがとうございます!引き続き、楽しいコンテンツを発信します。
土木のことをカジュアルに噛み砕いたユニークな形で届けることを目的に、土木工学の専門家やインフラ管理支援ボランティア、土木工学を志す学生たちが文章、写真、イラスト、動画、音声配信などのコンテンツを発信していく『from DOBOKU(フロムドボク)』です。