土木学会WEB情報誌『from DOBOKU』〜土木への偏った愛
祝結婚!NHKを巻き込んだaikoさんの"テトラポット問題"を振り返っておく
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祝結婚!NHKを巻き込んだaikoさんの"テトラポット問題"を振り返っておく

土木学会WEB情報誌『from DOBOKU』〜土木への偏った愛

もう21年も前のことで恐縮ですが2000年の話です。

歌手のaikoさんが唄う『ボーイフレンド』がヒットし、その年の『第51回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たします。このサビ部分に出てくる歌詞が「テトラポット」です。

この「あぁ〜、テトラポット登って〜♪」というサビの歌詞をそのまま歌っていいのか?とNHK内で議論になったとか。20年以上も界隈では語られてきている「テトラポット」か「テトラポッド」か「消波ブロック」か問題をここで整理したいと思います。

今となっては「ドルチェ&ガッバーナ」というブランド名を堂々と歌える時代ですけれども、どうして「テトラポット」が議論になったのか、少し解説します。


宣伝行為に加担してはいけない!

NHKには取材・制作の基本姿勢を記した「放送ガイドライン」が公表されていて、誰でも自由に閲覧・ダウンロードすることができるのですが、28ページ目にある【7 情報と宣伝・広告】にこう書かれています。

NHKが受信料に基盤を置く公共放送であり、特定の団体や企業、個人の利害に左右されず、不偏不党の立場で公平・公正な放送を行う。

NHK放送ガイドライン2020

NHKが公共放送の性質を帯びているため、その活動は放送法に規定されます。その放送法83条に「広告放送の禁止」がうたわれています。つまり、宣伝行為に加担しないように、表現には十分注意すること!みたいな規定があるんです。

・「企業に利用されている」という疑いを持たれるような表現や演出は避ける。人気商品や流行を社会現象として扱う際にも注意が必要である。
・テレビCMや雑誌広告のキャッチコピーなどの安易な使用は避け、使用する際には宣伝にならないように十分配慮する。
(一部を抜粋)

NHK放送ガイドライン2020


真紅なポルシェはNGだった〜言い換えがされた事例

商標登録といえば特許庁(深い意味はありません)

受信料から成り立つNHKが特定の企業および商品を宣伝してしまうことを控えるため、特定企業が「商標登録」をした商品をNHKは言い換えを行って放送しています。これまでの代表的な事例を調べてみました。

  • ジョンソン&ジョンソンの登録商標「バンドエイド」⇨「絆創膏」

  • TOTOの登録商標「ウォシュッレット」⇨「洗浄機付き便座」

  • ヤマト運輸の商標登録「宅急便(たっきゅうびん)」⇨「宅配便(たくはいびん)」

  • ソフトバンク社の登録商標「写メ(写メール)」⇨「写真付きメール」

  • 損保ジャパンの登録商標「ゴールデンウイーク」⇨「大型連休」

  • 日清食品の登録商標「カップヌードル」⇨「カップラーメン」または「カップ麺」

「ゴールデンウイーク」が損保会社の登録商標だったことに驚きを隠せませんが、この”言い換え”が大きく話題に登ったの1978年5月にリリースされた山口百恵さんの22枚目のシングル「プレイバックPart2」の中で登場してくる歌詞『真紅なポルシェ』でした。

百恵さんがNHKの音楽番組に出演したとき、この「真紅なポルシェ」の部分が、放送法83条1項などに抵触する「商品または企業の宣伝」とみなされ、百恵さんは「真紅なクルマ」と改変して歌いました。

ところが、百恵さん初の紅組トリで出場した同年の『第29回NHK紅白歌合戦』で『真紅なポルシェ』で歌ったことをきっかけに、以後はNHKでも言い換えをせずに『ポルシェ』と歌ってきたようです。

aikoさんの「テトラポット」は誰のものなのか?

さてさて、前置きがかなり長くなりましたが、『ボーイフレンド』がヒットした2000年の『第51回NHK紅白歌合戦』に初出場したaikoさん。果たしてサビ部分に出てくる歌詞「テトラポット」を無事に歌えたのでしょうか?

答えを先にお伝えしますと、そのまま歌われました。

じゃあ、何が問題で議論になったのか?というと、「テトラポット」と「テトラポッド」が酷似していることです。実は、この「テトラポッド」は株式会社 不動テトラの登録商標なため、特定の企業および商品を宣伝することに当たらないか?と。

業界的な名称としては消波ブロックと呼ばれ、海岸や河川などの護岸や水制を目的に設置するコンクリートブロックのことです。消波根固ブロック(しょうはねがためブロック)、波消しブロック(なみけしブロック)とも呼ばれます。

そんな「テトラポッド」ですが、aikoさんは「ド」ではなく、濁点を外した「テトラポット」と歌詞で使いました。制作段階からNHKの商標問題を意識して、あえて「ト」とした!のではなく、濁点を外した「テトラポット」が正式名称だと勘違いして使っただけのようでした。

もし、NHK内でNGとされた場合、「あぁ〜、消波ブロック登って〜♪」になっていたんでしょうか。字余りすぎて歌いづらいですね。

消波ブロックはお好きですか?

波のエネルギーによって海岸線が侵食されるのを防ぐために設置される消波ブロックは、単体でも0.5t〜80tと大きいのが特徴です。形状も四脚ブロック、六脚ブロック、八脚ブロック、中空三角ブロック、ドーム型等様々なものがあります。日本消波根固ブロック協会会員企業の製品だけで100種類以上あるんですよ!

日本消波根固ブロック協会より

4本の脚が放射状に伸びた四脚ブロックの「テトラポッド」は1949年にフランスのネールピック社により発売されたもので、「テトラ」(4本)の足という意味であり、本来は「四肢動物」の意味だそうです。

そんな消波ブロックの型枠の話を写真で紹介した記事を合わせてご紹介しておきます。消波ブロックだけでもマニアックなんですが、その型枠にスポットライトを当てています。


それでは最後に、aikoOfficialより『ボーイフレンド』のMVを貼っておきます。aikoさん、ご結婚おめでとうございます!

文責:副偏集長 外山田洋
フリーの編集者 兼 ライター/デザイン制作会社のプロデューサー/ラジオパーソナリティ・MC などと、落ち着きのない仕事感をごちゃっとカバンに詰めて、雨のちハレの精神で生きる人です。趣味はトレイルランニングと農業。土木は門外漢。

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土木のことをカジュアルに噛み砕いたユニークな形で届けることを目的に、土木工学の専門家やインフラ管理支援ボランティア、土木工学を志す学生たちが文章、写真、イラスト、動画、音声配信などのコンテンツを発信していく『from DOBOKU(フロムドボク)』です。